妊娠について
妊娠とMS

MS(多発性硬化症)の発症する年齢は一般に若齢(20~30代)で、男性より女性に多い疾患です。そのため妊娠に対するMSの影響は、とても大切な問題です。
このページでは妊娠中や妊娠後の再発率、産まれる子供の健康、治療に対する影響といった問題をご説明します。

MSの女性は子供を産めますか?
MS(多発性硬化症)が不妊の原因になったり出産に悪影響を与えることはありません。MSの女性から生まれた子供は平均して正常な体重で、精神的・身体的障害などのリスクが高いことはありません。しかしMSの女性は妊娠する前に、次のようなことを考慮するようにしてください。
現在の病状と将来考えられる障害の程度を考え、以後18年間にわたり子供の面倒を見る能力があるのかまた家族のサポートは得られるのかなどを考慮することが大切です。
継続的なサポートが得られるか、特に再発の確率が高い出産後3~6ヶ月間のサポートは不可欠です。
妊娠前・妊娠中の治療

再発寛解型MS(多発性硬化症)においては、妊娠中、特に最終の3ヶ月間は再発のリスクが低いと言われています。しかし出産後の3~6ヶ月間は再発率の高い時期であり、ホルモン変化が原因と言われています。
これらを総合して考えてみると、障害の進行が妊娠によって増強することはなく、むしろ減弱すると言われています。

分娩

分娩は産婦のMS(多発性硬化症)の状態を熟知した助産婦と医師が立会い、病院で実施されることが望ましいでしょう。著しい麻痺や感覚の喪失があり、陣痛の開始を感じられない場合や分娩を誘発する必要がある場合には、妊娠の最終1ヶ月間は連続的にモニタリングすることがあります。硬膜外麻酔が再発率に影響するかどうかはまだはっきりしていません。この点は麻酔医と話し合わなければなりません。

妊娠中の配慮

MS(多発性硬化症)の女性は妊娠すると強い疲れを感じることが多く、特に妊娠初期の3ヶ月間にみられます。また便秘や尿路感染を起こすことが比較的多いでしょう。
妊娠の終わり頃には、MSの女性は立つのが不安定になることがあり、注意しなければなりません。
次のような、一般的な妊婦さんのアドバイスに従うことが大切です。
・健康的でバランスの取れた食事をとること
・ストレスを避け、十分な休養をとること

授乳

授乳は再発率に影響せず、MS(多発性硬化症)の女性は過度に疲れると感じなければ母乳で育てることができます。治療薬の中には母乳中に移行するものもあり、そのため服用中には授乳できないものがあります。

MSの遺伝

親がMSであると、成人になってからMSを発症するリスクはわずかに上昇します。しかしその確率は1~5%であり、高いものではありません。
MSは体質と環境が関与して発症すると考えられていますので、いわゆる遺伝病ではありません。

このテキストの執筆に使用した参考文献:
  • Multiple sclerosis and pregnancy. Lorenzi AR, Ford HL. Multiple sclerosis and pregnancy. Postgrad Med J 2002;78:460-464.
  • Confavreux C, Hutchinson M et al. Rate of pregnancy-related relapse in multiple sclerosis. The New England Journal of Medicine 1998;339(5):285-291.
  • Elenkov IJ, Wilder RL et al. IL-12, TNF-α, and Hormonal Changes during Late Pregnancy and Early Postpartum: Implications for Autoimmune Disease Activity during These Times. Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism 2001;86(10):4933-4938.